UWBを用いて、実際の接触を測る
感染症の接触者調査では、本人の記憶や自己申告、現場職員による記録などをもとに、接触の有無や程度を判断することが一般的です。しかし、人の記憶や観察だけでは、短時間の接触、繰り返される接触、距離の変化などを正確に把握することは容易ではありません。
本プロジェクトでは、UWB(Ultra-Wideband:超広帯域無線)による高精度屋内測位を用いて、人と人との距離、接触時間、接触頻度、滞在、動線などを記録します。UWBでは、約10cm・1秒単位のデータを取得できるため、従来の自己申告や接触記録では見えにくかった接触の実態を分析できます。
これらのデータを、自己申告、現場記録、感染管理上の判断と比較し、実際の感染リスクをより適切に反映する接触評価の方法を構築することを目指しています。
UWBを用いて、距離、接触時間、接触頻度、滞在、動線を高精度に記録します。
UWBによる測定結果を、自己申告や現場で作成された接触記録と比較します。
接触データと行動・環境要因を統合し、感染リスクをより精緻に評価する方法を開発します。
これまでの研究成果と研究基盤
水本研究室では、学校および介護施設においてUWBを用いた接触計測を行い、自己申告や現場の接触記録と、実際に測定された近接データとの一致・不一致を検討してきました。
これまでの研究から、本人の自己申告、施設内で作成された接触記録、UWBによる高精度測定の間には、無視できない乖離が生じる可能性が示されています。これらの成果を基盤として、従来の濃厚接触者の定義を実世界データから再検討し、感染リスクをより適切に反映する評価方法の構築を進めています。
関連研究
介護施設におけるモニタリングおよび自己申告による濃厚接触記録とUWB由来の近接データとの関連
Monitoring-based and self-reported close-contact records in relation to ultra-wideband-derived proximity in a long-term care facility: a single-facility observational study.
Shinto H, Chowell G, Takayama Y, Ohki Y, Saito K, Mizumoto K.
medRxiv. 2026.
https://doi.org/10.1101/2026.04.10.26350570
自己申告と高精度UWB測定による濃厚接触の乖離:日本の中学校からの実証
Discrepancies between self-reported and high-precision UWB-measured close contacts: Evidence from a Japanese junior high school.
Shinto H, Mizumoto K, Ohki Y, Chowell G, Saito K, Takayama Y.
medRxiv. 2025.
https://doi.org/10.1101/2025.09.11.25335361
本プロジェクトでは、大学院生が調査設計、データ解析、学会発表、論文執筆に主体的に参加し、研究成果を筆頭著者として公表しています。
科研費による研究基盤
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
研究課題名
接触ログに基づく濃厚接触者定義の再検証と感染リスク指標の構築に関する疫学研究
研究期間
2026年4月–2030年3月
研究課題番号
26K02652
研究代表者
水本憲治
本研究では、接触者調査で用いられてきた「1m以内・15分以上」という濃厚接触者の目安について、UWBによる約10cm・1秒単位の高精度測位データを用いて、その妥当性を再検討します。
自己申告による接触記録とUWB測定との不一致を定量化するとともに、距離、接触時間、接触頻度、身体の向き、行動、環境などの要因を統合し、感染リスクをより精緻に反映する新たな接触評価の枠組みを構築します。
入学後に取り組める研究
本プロジェクトでは、UWB(Ultra-Wideband:超広帯域無線)による高精度屋内測位を用いて、医療・介護施設や学校などにおける人と人との接触、滞在、動線を測定し、感染リスクの評価と感染管理の改善につなげます。
入学後は、プロジェクトの一員として、現場調査の設計・実施、UWBデータの整理・解析、研究成果の発表・論文化まで、一連の研究過程に参加します。その中から、本人の関心や専門性に応じた学位研究を組み立てます。
取り組む研究テーマの例は、次のとおりです。
- UWBによる接触データと、自己申告・現場記録との比較
- 接触の距離・時間・頻度を用いた濃厚接触者定義の再検証
- 接触ネットワークや時空間データの解析
- 感染リスクをより適切に反映する新たな指標の構築
- 医療・介護現場における接触追跡や感染管理への実装
具体的な研究課題は、本人の研究関心、これまでの専門、利用可能なデータ、学位研究としての独自性を踏まえて相談しながら決定します。
歓迎する学生像
医学・公衆衛生だけでなく、情報学、工学、統計学、データサイエンス、看護・保健医療、社会科学など、異なる専門的背景を持つ方を歓迎します。
特に、次のような方に適したプロジェクトです。
- 実際の医療・介護・教育現場から研究課題を見いだしたい方
- フィールド調査とデータ解析の両方に関わりたい方
- 異なる専門分野の研究者や現場関係者と協働したい方
- データの限界、研究倫理、個人情報保護を大切にできる方
- 研究成果を学会発表や査読論文としてまとめたい方
UWBや感染症研究に限らず、これまで培ってきた専門性をどのように本プロジェクトへ生かせるかを一緒に検討します。RやPython等によるデータ解析の経験がある方は、その強みを生かすことができます。
第1年次入学・第3年次編入学と進学相談
本プロジェクトでは、京都大学大学院総合生存学館への第1年次入学または第3年次編入学を通じて、UWBを用いた研究に取り組みたい方からの進学相談を、入学年度を限定せず継続的に受け付けています。
第3年次編入学試験は秋に実施されるため、受験を検討している方は、研究計画の検討と出願準備の時間を確保するため、早めにご相談ください。まだ研究テーマが固まっていない段階や、将来の進学を検討している段階でも相談できます。
初回のご連絡では、次の事項をお知らせください。
- 現在の所属と学年
- これまでの専門または研究経験
- 関心のある研究テーマ
- 希望する入学時期
入試日程、出願資格、提出書類等については、総合生存学館が公表する最新の募集要項をご確認ください。研究室への事前相談は、入学試験の合格や受入れを保証するものではありません。
