空港の発熱スクリーニングで、新型コロナ感染者はどれくらい検知できたのか

この研究では、沖縄県内9空港で2020年5月から2022年3月まで行われた「サーモグラフィ」を使った発熱スクリーニングで、どれくらいの新型コロナ感染者を検出できたかを調べました。
▶併せて読んでください。→空港でのFever screening(発熱スクリーニング)の効果

空港の発熱スクリーニング、どこまで感染者を見つけられた?
検疫を科学する

空港の検温スクリーニングで、新型コロナ感染者はどれくらい検知できたのか

沖縄県内9空港、約2年間、900万人超のデータをもとに、サーモグラフィによる発熱スクリーニングの検知状況を確認しました。

0万人 那覇空港での到着者スクリーニング人数
0% 実際の感染者を検温で捉えられた割合(捕捉率)
0 発熱スクリーニングで検知できた人数

この研究でわかったこと

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の流行下、日本国内の多くの空港では、非接触の体表温度センサー「サーモグラフィ」を使った発熱チェックが実施されました。研究チームが確認したのは、沖縄県内9空港で2020年5月から2022年3月まで行われたこのスクリーニングの検知状況です。那覇空港に到着した約297万人(2020年5月〜2021年3月)のうち、サーモグラフィで発熱の疑いありとされたのは572人。さらに体温計で確認したところ、発熱基準(37.5℃以上)に該当したのは10人でした。同じ期間に沖縄県に到着していた新型コロナ感染者は122人で、このうち検温で検知できた割合(捕捉率)は8.2%でした。

サーモグラフィ(thermography)とは
体の表面温度を、触れずに離れた場所からカメラで測る機器です。空港の到着ゲートなどで通過する人の体表温度を自動的に読み取り、高温の人を検知する仕組みになっています。
捕捉率(capture rate)とは
実際に感染していた人のうち、検温スクリーニングで「発熱疑い」として実際に検知できた人の割合です。この研究では「10人(検知できた人数)÷122人(本当の感染者数)」で計算しています。
95%信頼区間(95%CI)とは
調査結果には誤差があるため、「真の値がだいたいこの範囲に収まるだろう」という統計的な幅を示したものです。例えば捕捉率8.2%(95%CI 4.00〜14.56%)なら、真の捕捉率はおよそ4〜15%の間にある可能性が高いといえます。

主要な発見

発熱スクリーニングで検知できた人数は10人

約297万人の到着者のうち、サーモグラフィで発熱の疑いありとされたのは572人(0.02%)。このうち体温計で発熱(37.5℃以上)を確認できたのは10人でした。

同時期に報告された感染者は122人

同じ調査期間に沖縄県に到着していた新型コロナ感染者は、120人(県外から到着)と2人(県内在住で県外渡航歴あり)の計122人でした。このうち発熱スクリーニングで検知できたのは10人です。

空港によって検知率に大きな差

離島の北大東空港では発熱疑いの検知率が2.20%と突出して高かった一方、石垣空港では0.00%でした。屋外を歩く動線など、測定環境の違いが影響したとみられています。

同時期に報告された感染者数と発熱スクリーニングで検知された人数の差

同時期に報告された感染者数
122人
検温で見つかった数
10人

沖縄県内、2020年5月13日〜2021年3月31日の期間の集計です(那覇空港到着者約297万人が対象)。

発熱スクリーニングで検知できた新型コロナ感染者は、同時期に報告された感染者数の8.2%にあたる10人でした。

研究チームは、検温に加えて搭乗前のPCR検査など複数の対策を組み合わせることの意義を指摘しています。

社会への示唆・私たちにできること

感染していても熱が出ない「無症状」の人がいることや、発熱するタイミングと空港を通過するタイミングが人によって異なることが、検温スクリーニングの結果に影響しています。研究チームは、発熱の有無を確認する検温に加えて、搭乗前のPCR検査など複数の対策を組み合わせることを提案しています。

発熱がなくても検査や体調管理を

検温をパスしたことは、感染していない証明にはなりません。旅行や帰省の前後は、体調管理と検査の活用を心がけたいところです。

複数の対策を重ねることが大切

検温は簡単で負担が少ない検査方法です。検査・換気・体調が悪いときは休むといった行動を組み合わせることで、地域医療の負担軽減につながります。

論文情報

タイトル
Assessment of fever screening at airports in detecting domestic passengers infected with SARS-CoV-2, 2020–2022, Okinawa prefecture, Japan
著者
Yoshihiro Takayama, Yining S. Xu, Yusuke Shimakawa, Gerardo Chowell, Masahiro Kozuka, Ryosuke Omori, Ryota Matsuyama, Taro Yamamoto, Kenji Mizumoto
掲載誌
BMC Infectious Diseases (2024) 24:542
DOI
https://doi.org/10.1186/s12879-024-09427-5
調査概要
沖縄県内9空港を対象に、2020年5月〜2022年3月のサーモグラフィによる発熱スクリーニング実績(到着者9,003,616人、那覇空港からの出発者5,712,983人)を分析しています。捕捉率の算出には、那覇空港到着者2,971,198人(2020年5月13日〜2021年3月31日)と、同期間の沖縄県のコロナ確定症例データ(122人)を使用しました。

本ページは、学術論文の内容を一般の方向けにわかりやすく紹介することを目的とした解説コンテンツです。

数値・図表は原論文(BMC Infectious Diseases, 2024)に基づいています。詳細は原論文(DOI: 10.1186/s12879-024-09427-5)をご参照ください。