空港の検査は、旅行前の「体調チェック」を後押しする

この研究では、沖縄・那覇空港で行われた自己負担のPCR検査プロジェクト「NAPP」の参加者へのアンケートを分析し、検査の存在を知っているだけで、旅行前の健康意識が大きく高まることがわかりました。

発熱スクリーニング PCR検査 空港での感染症対策 行動科学
Kozuka M, et al. IJID Regions 18, 100817 (2026)

空港の検査は、旅行前の「体調チェック」を後押しする

沖縄・那覇空港で行われた自己負担のPCR検査プロジェクト「NAPP」。参加者へのアンケートから、検査の存在を知っているだけで、旅行前の健康意識が大きく高まることがわかりました。

0 がアンケートに回答(NAPP参加者のうち)
0 発熱スクリーニングを知っていた人のうち、旅行前の体調意識が高まったと回答した割合
0 旅行前に何らかの症状があったと申告した人の割合

この研究でわかったこと

2021年2月〜3月、沖縄県は那覇空港(OKA)に到着する国内線の旅客を対象に、自己負担で受けられるPCR検査プログラム「那覇空港PCR検査プロジェクト(NAPP)」を実施しました。この研究では、NAPPに参加した4,545人へのアンケートを分析。空港での発熱スクリーニングを知っていた人の94.1%、有熱者向けPCR検査を知っていた人の96.4%が「旅行前に自分の体調をより意識するようになった」と回答しました。一方で、旅行前に何らかの症状(多くは軽い鼻症状)があったと申告した人も3.9%おり、検査を受けた理由によってその割合には違いが見られました。

知っておきたい用語

PCR検査とは

ウイルスの遺伝子の一部を検出する検査方法。感染しているかどうかを調べるために広く使われています。

発熱スクリーニングとは

空港などでサーモグラフィー(体温を測る機器)を使い、発熱していないかを確認する取り組みです。

NAPP(ナップ)とは

「那覇空港PCR検査プロジェクト」の略称。2021年2月〜3月に沖縄県が那覇空港で実施した、自己負担で受けられるPCR検査プログラムです。

調整オッズ比(aOR)とは

年齢や性別など他の要因の影響を取り除いたうえで比較した「起こりやすさ」の指標。1より小さいほど起こりにくいことを示します。

主要な発見

検査を知っているだけで、体調への意識が変わる

発熱スクリーニングを知っていた人の94.1%、有熱者向けPCR検査を知っていた人の96.4%が「旅行前に体調をより意識するようになった」と回答。検査で見つけられる感染者数は限られていても、"見える対策"があること自体が旅行者の行動を後押ししていた可能性があります。

それでも3.9%は症状ありのまま渡航

2021年3月の追加調査(1,859人)では、3.9%(73人)が旅行前に何らかの症状を報告。最も多かったのは鼻水(64.4%)、次いでくしゃみ(38.4%)、咳(19.2%)で、発熱の申告は全体のわずか0.27%でした。

検査を受けた理由で症状の割合に差

「職場の指示」で検査を受けた人は症状ありの割合が1.60%と最も低く、「家族のため」(4.54%)と比べて統計的に有意な差(P = 0.004)。他の要因を調整しても、職場指示の人は症状ありになりにくい傾向(調整オッズ比0.36)が確認されました。

検査を受けた理由別 ― 症状があった人の割合

2021年3月の追加調査で「検査を受けた理由」を回答した1,807人のうち、症状ありと回答した割合

家族のため4.54%
職場の指示1.60%
自分の心配4.58%
その他5.15%

※バーの長さは症状ありの割合をわかりやすく比較するためのイメージで、実際の数値はグラフ内の%表示のとおりです(出典:論文 Table 5)。「職場の指示」で検査を受けた人は、「家族のため」に受けた人に比べて症状ありの割合が有意に低く(P = 0.004)、年齢や性別などを調整した分析でも同じ傾向(調整オッズ比0.36、95%信頼区間0.15-0.78)が確認されました。

居住地による「検査の認知度」の違い

発熱スクリーニングを知っていた割合

沖縄県内
92.3%
県外
81.5%

有熱者向けPCR検査を知っていた割合

沖縄県内
82.6%
県外
67.0%

沖縄県内在住者は、県外在住者に比べて空港での検査について知っていた割合が高い結果でした(いずれもP < 0.001)。一方で、検査の存在を知った後に「体調意識が高まった」と回答した割合には、居住地による差はほとんどありませんでした。

目に見える検査の仕組みがあるだけで、人は自分の健康により注意を払うようになる。

― この研究が伝える一番大切なメッセージ

社会への示唆と、私たちにできること

この研究からの提言

  • 目に見える検査や体温チェックは、感染者を確実に見つける精度が高くなくても、人々の健康意識を高める効果が期待できる
  • 住んでいる地域外の人には情報が届きにくい傾向があるため(発熱スクリーニングの認知度:県内92.3%に対し県外81.5%)、旅行者の出発地側からの情報発信が重要
  • 職場からの検査の呼びかけは、体調不良時に旅行を控えるといった行動を後押しする可能性がある

読者へのメッセージ

  • 旅行前に体調がすぐれないときは、無理をせず予定の見直しを検討してみましょう
  • 空港などでの検査や体温チェックは、面倒に感じても「自分と周りの健康を守るサイン」と捉えてみましょう
  • 職場や自治体からの検査の呼びかけは、自分自身の体調を振り返るよいきっかけになります

論文情報

タイトル
Pre-travel health awareness and perceptions of voluntary airport PCR testing during COVID-19: A cross-sectional study in Okinawa, Japan
著者
Kozuka M, Shimakawa Y, Chowell G, Nagamoto T, Matsuyama R, Omori R, Xu YS, Shimoji Y, Ogawa K, Takayama Y, Mizumoto K
掲載誌
IJID Regions, 18 (2026) 100817
調査概要
2021年2月〜3月、那覇空港PCR検査プロジェクト(NAPP)参加者を対象としたアンケート調査。回答者4,545人(うち2021年3月の追加調査対象1,859人)。

本ページは学術論文の内容を一般の方にわかりやすく紹介することを目的として作成したものであり、原論文の翻訳や医療的な助言ではありません。詳しい内容は原著論文(IJID Regions, DOI: 10.1016/j.ijregi.2025.100817)をご確認ください。