学校での職員が発端の二次感染の起こりやすさを比較
この研究では、沖縄県の学校PCRプロジェクトのデータを使い、感染の発端が教職員だった事例について、その後どれくらい二次感染が検出されたかを、保育園・幼稚園と小中高校で比べました。

学校での職員が発端の二次感染の起こりやすさを比較
沖縄県の学校PCRプロジェクトのデータを使い、感染の発端が保育士・教員だった場合に、その後どれくらい二次感染が検出されたかを、保育園・幼稚園と小中高校で比べました。
症例
検出されなかった割合
二次感染リスク(学校比)
この研究でわかったこと
2022年1月1日から3月11日まで、沖縄県内の保育園・幼稚園、小中高校で実施された学校PCRプロジェクトの記録のうち、感染の発端者が誰か(児童・園児か、教員・保育士か)が判明していた897件の症例を分析しました。全体では73.1%の事例で二次感染は検出されず、ほとんどの場合は感染が広がらなかった一方、一部で複数人の感染が確認される事例もありました。
とくに注目されたのは、保育士・教員が発端となった場合の違いです。保育士が発端となった保育園・幼稚園の事例では32.3%で二次感染が検出されたのに対し、教員が発端となった小中高校の事例では12.8%にとどまりました。中学校・高校では、教員発端での二次感染は1件も確認されていません。
用語をかんたんに
- RT-PCR検査とは
- ウイルスの遺伝子を検出する検査方法。今回はだ液を自分で採取し、まとめて検査する形で行われました。
- 発端例(index case)とは
- クラスなどでの一斉検査のきっかけとなった、最初に陽性が確認された人のこと。必ずしも感染の"大元"とは限りません。
- Revent(アールイベント)とは
- 1回の症例あたりで検出された二次感染者数の平均値。1人ひとりの感染力を表す数値ではありません。
主要な発見
保育園・幼稚園:保育士発端の約3割で二次感染
保育士が発端となった事例のうち32.3%(95%信頼区間 26.9〜38.0%)で1人以上の二次感染が検出され、1事例あたりの平均二次感染者数(Revent)は0.62でした。乳幼児は密接な接触を避けにくく、また、マスク着用がむずかしい等が背景と考えられます。
小中高校:教員発端の二次感染はわずか12.8%
教員・職員が発端となった小中高校の事例では12.8%(95%信頼区間 4.3〜27.4%)にとどまりました。(1事例あたりの平均二次感染者数(Revent)も0.15でした。)内訳を見ると、確認された二次感染はすべて小学校(5/22件、22.7%)で発生しており、中学校(0/11件)・高校(0/6件)では1件も検出されませんでした(件数が少ないため、この結果の不確実性は大きい点に注意が必要です)。
限られた検査資源を
どこに配分すべきか
保育園・幼稚園では保育士への定期的な検査を、小中高校では感染者が出た際の迅速な接触者検査を優先する方が、限られた検査資源をより効率的に活かせる可能性が示されました。
図解:発端別・施設別の二次感染発生割合
縦軸:1事例あたり1人以上の二次感染が検出された割合(%)。エラーバーは95%信頼区間。
児童・園児が発端の場合は、保育園等(24.8%)と小中高校(25.4%)で差はほとんどありませんでした。差が目立つのは「教員・保育士」が発端の場合です。
同じ「職員が発端」のケースでも、二次感染が検出された割合は保育園・幼稚園で32.3%、小中高校で12.8%。両者の差はリスク比にして約2.5倍でした(95%信頼区間 1.09〜5.81)。
Fisher's exact test P = 0.014
社会への示唆・私たちにできること
保育・教育の現場へ
検査の回数や人手が限られる場合、保育園・幼稚園では保育士への定期検査を、小中高校では感染判明後の迅速な接触者検査を優先することが、資源の有効活用につながる可能性があります。
保護者・職員の方へ
乳幼児のいる保育の現場では、近距離での接触を完全に避けることは難しいのが実情です。だからこそ、体調がすぐれないときは無理をせず、早めの検査や休養を心がけることが引き続き大切です。
政策・制度を考える方へ
学校種別や年齢層によって、効果的な検査戦略は異なる可能性があります。一律の対策ではなく、施設の特性に応じた資源配分の検討材料として活用できます。
※本研究は観察研究であり、二次感染の"発生源"を確定するものではありません。対象は沖縄県、かつオミクロン株が主流だった2022年1〜3月に限られるため、他の地域や流行株に結果がそのまま当てはまるとは限らない点にご留意ください。


