学校でのコロナ感染、実際にはどれくらい広がっていた?ー沖縄の大規模調査でわかったこと

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の流行中、多くの国で「子ども同士が学校で感染を広げやすい」という想定のもと、学校閉鎖が繰り返し行われました。しかし沖縄県で2021-2022年に行われた接触者への大規模PCR調査の結果を分析したところ、学校での感染の広がりは私たちの想定ほどではありませんでした。

学校でのコロナ感染、実際にはどれくらい広がっていた?
感染症疫学学校保健
Takayama et al.(2024)Emerging Infectious Diseases 誌

学校でのコロナ感染、実際にはどれくらい広がっていた?
沖縄の大規模調査でわかったこと

2021〜2022年、沖縄県内のほぼ全ての学校・保育施設で行われた大規模PCR調査。約14万人の「濃厚接触者・接触者」を追跡した結果、学校での感染の広がりは、私たちが恐れていたほどではなかったかもしれません。

143,184 追跡された接触者数
2.04% 接触者全体の陽性率
約0.5 1件あたりの平均二次感染者数

この研究でわかったこと

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の流行中、多くの国で「子ども同士が学校で感染を広げやすい」という想定のもと、学校閉鎖が繰り返し行われました。しかし沖縄県では、2021年5月から2022年9月まで、園児・児童・生徒が新型コロナに陽性となるたびに、同じクラスの人たち全員にPCR検査を実施する大規模プロジェクトが行われていました。その結果を分析したところ、陽性者が出たクラスでも、実際に感染が広がって新たに陽性となった人は平均して1件あたり0.5人程度にとどまっていたことがわかりました。学校の種類によって差はあるものの、大規模な子ども同士の感染拡大は確認されなかったのです。

知っておきたい言葉

濃厚接触者(のうこうせっしょくしゃ)とは

この研究では「陽性者から1メートル以内の距離で、15分以上、マスクなどの対策なしに一緒にいた人のこと」と定義しています。感染リスクが比較的高いと考えられるグループです。

陽性率とは

検査を受けた人のうち、実際に陽性と判定された人の割合のこと。この研究では「接触者のうち何%が新たに感染していたか」を示す指標として使われています。

二次感染とは

最初に見つかった陽性者(index case-patient・指標患者)から、他の人にうつってしまうこと。今回の研究の主なテーマは「学校で二次感染がどれくらい起きたか」です。

黙食(もくしょく)とは

給食の時間に会話をせず、静かに食事をとる取り組み。当時、政府が学校での感染対策として推奨していました。

主要な発見

陽性者は多く見つかったが…

6,736件

調査期間中、1陽性者に対する接触者調査の数は6,736件発生。その約半数(50.7%)が保育園・幼稚園で起きていました。

実際に広がった感染は限定的

0.43人

1件あたりの平均二次感染者数は0.43人(中央値0人)。ほとんどの場合、クラスで陽性者が出ても他への感染はゼロだったことになります。

施設の種類で差があった

保育・学童で高め

保育園・幼稚園(3.44%)と学童保育(2.51%)は他の学校種別(約1.0%)に比べ陽性率が高く、年齢や環境の違いが影響したと考えられます。

施設タイプ別・接触者全体の陽性率

保育園・幼稚園
3.44%
学童保育(放課後)
2.51%
小学校
約1.0%
中学校
約1.0%
高等学校
約1.0%

※論文中の「接触者全体(濃厚接触者+非濃厚接触者)」の陽性率をもとに作成。特別支援学校はデータが少ないため参考値として省略しています。

適切な感染対策がとられていた学校では、二次感染のリスクは必ずしも高くなかった。

— 研究チームによる考察より

社会への示唆・私たちにできること

一律の学校閉鎖には慎重な検討が必要かもしれません。子どもの学びの機会を長期間奪うことの影響は大きく、感染状況を踏まえたバランスの取れた対応が重要です。

手洗い・マスク・黙食などの基本的な対策は有効と考えられます。こうした対策がとられていた学校では、子ども同士の大規模な感染拡大は確認されなかったため、二次感染が抑えられていた可能性があります。

保育園・幼稚園や学童保育など、密になりやすい環境では特に注意が必要です。年齢が低いほどマスク着用や距離の確保が難しく、感染対策の強化が今後の課題として挙げられています。

論文情報

タイトルSARS-CoV-2 Infection in School Settings, Okinawa Prefecture, Japan, 2021–2022
著者Takayama Y, Shimakawa Y, Matsuyama R, Chowell G, Omori R, Nagamoto T, Yamamoto T, Mizumoto K
掲載誌Emerging Infectious Diseases(米国CDC発行)Vol. 30, No. 11, 2024年11月
DOIhttps://doi.org/10.3201/eid3011.240638
調査概要沖縄県内の小学校・中学校・高校・特別支援学校・学童保育・保育園・幼稚園を対象とした大規模PCR追跡プロジェクト(2021年5月〜2022年9月)。追跡された接触者143,184人(うち濃厚接触者20,546人)のデータを分析。
このページは、学術論文の内容を専門知識のない方にもわかりやすく伝えるために作成した一般向けの解説です。数値や表現は元論文に基づいていますが、要約・意訳を含みます。正確な内容は必ず原著論文(DOI: 10.3201/eid3011.240638)をご確認ください。